こんなこともしましたね…(2018.2.17 福岡市にて)

鴻臚館跡であまづらブンブン(2018年2月17日)より。


 2018年2月17日に福岡市中央区にある鴻臚館跡展示館裏芝生広場で、奈良女子大学甘葛煎再現プロジェクト・前川が指導して「幻のシロップをつくろう~あまづらブンブン」が実施されました。


 「ブンブン」とは、本学甘葛煎再現プロジェクトチームが考え出した、遠心力を利用して樹液を採取する方法のことです。

 「あまづらブンブン」は、イベント主催の福岡市の方が命名くださいました!

 ブンブンツタを振り回して、親子、年齢関係なく楽しく古代の甘味料を作って味わおうという素敵な企画です。

 その舞台となった鴻臚館跡は甘葛煎と深いご縁がありました。

 鴻臚館は、博多湾に面した日本や外国の外交使節が滞在した迎賓館です。遣唐使もここから唐へ旅立ちました。その遣唐使が持参した唐の皇帝への贈り物のなかに、甘葛煎がありました。全国から集められた甘葛煎が、平城京や平安京から遣唐使とともに出立し、この鴻臚館で唐へ向かうまで大切に保管され、遣唐使とともに旅立ったのです。


朝9時から福岡市内の公園でツタを伐採しました。

 大きなクスノキに巻きついた径8㎝もあるツタです。とてもツタにはみえません。これが、古代人がツタと区別して甘葛(あまい、かづら、すなわち、あまづら)と称した植物なのでしょう。


 幼稚園の子どもたちからご年配の方まで、楽しくブンブンとツタを振り回しました。そのあと抽出した樹液を集めて鍋で煮詰めます。匂いが漂うと、「いもの匂いがする!」と、「いも???」と、驚きましたが、九州の方々にとったら甘いサツマイモは生活に根付いた食べ物で、甘いものだったようです。そんな土地柄を知ることもできました。


 しだいに糖度が高まり、糖度確認するたびに試食を行うと、「あまい」「優しい味」と、小一時間の間、鍋の周囲から離れる人はいませんでした。やがて濃い琥珀色の甘葛煎ができました。32.32kgのツタから980ccの樹液を得て、ろ過した920ccを煮詰めて、130ccの甘葛煎ができました。


 2017年に福岡市博物館にて開催された「よみがえれ!鴻臚館」(9/7~10/22)の展示では、本学で精製した甘葛煎と、私たちに甘葛煎製造法を伝授してくださった北九州市小倉薬草研究会の甘葛煎が展示ケースに並びました。そして近代初の本格的な再現に成功した小倉薬草研究会会長の故石橋顕氏の紹介もありました。九州は、甘葛煎がよみがえった土地だったのです。しかも、小倉薬草研究会が再現に成功したのは、1987年12月12日で、ちょうど30年前。そしてまた鴻臚館の発掘調査が始まったのも、30年前という偶然!

「あまづらブンブン」には、元小倉薬草研究会の方たち3人が来てくださいました。30年前当時の試行錯誤で甘葛煎再現を行ったエピソードや、「ここから気を抜くな!」というアドバイスなど、大変貴重な機会でした。小倉薬草研究会が甘葛煎再現を中止したのは1998年。2018年の再現は、20年前に途絶えた九州での甘葛煎再現の復活でした。小倉薬草研究会から私たち再現プロジェクトがいただいた学恩を、今度は私たちが、自ら考え出した方法でお返しする、恩送りができました。

甘葛事始 アマヅラコトハジメ

いにしえの製法が失われてしまった幻の甘味料「甘葛煎(あまづらせん)」 再現実験を重ね、幻を現代によみがえらせようとする試みが奈良で行われています。

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